クロルピクリンは土壌中の病原菌、害虫、センチュウなどを防除する優れた薬剤です。クロルピクリンはガスとして効果を発揮するため、正しい使い方をしないと作業をしている人や、付近の住民、作物に悪影響を与えることになります。
最近では、住宅や畜舎が接近しているケースが多くなっておりますので、使用に当たっては一層注意深く、安全で正しい作業を行うよう心がけなければなりません。ここでは、クロルピクリンの安全で適正な取扱いについて紹介します。
クロルピクリンを処理する場合、保護メガネ、防護マスクを準備してください。
保護メガネの選び方
クロルピクリンガスが漏れ込まないゴーグル型のものをえらんでください。
防護マスクの選び方
吸収缶と面体からなる「土壌くん蒸用」の防護マスクをえらんでください。
※「粉剤・液剤用」の農業用マスク(防じんマスク)や防護マスクでは効果がありません。
注入機の薬量目盛は正しいか、液漏れ、ノズルの目づまりはないかなどを点検します。
注入機の整備が悪いと作業に支障をきたすばかりでなく、注入量の不足などで効果に影響がでます。
直射日光下に放置されたクロルピクリンは、開栓する時に噴き出すことがありますので、冷暗所に保存しているものを使いましょう。
また、開栓する時に顔を真上に持っていかないように注意しましょう。
注入されたクロルピクリンは土中ですぐガス状になり拡散し、効果を発揮しますが、徐々に大気中に漏れ出します。その程度は畑の土壌の種類や気象条件によってかなり違ってきます。
1.前作の茎葉や根等を取り除く
2.なるべく深く耕し、土塊は細かく砕く。握って放すと割れ目ができるくらいの湿り具合の状態が良い。
3.堆肥を入れて、土とよく混ぜる。ただし、未熟有機物のすき込みはさける。
4.整地を十分に行い、表面の凹凸がないようにする
*人家、畜舎、鶏舎に隣接した畑、隣に作物が生育中の畑がある場合、また、降雨等により、井戸、地下水、養魚地、河川等にクロルピクリンが流入するおそれのある畑などでの使用は避けてください。
*山の中腹等にある畑での使用で、もれたガスがふもとの人家や畜舎、鶏舎、庭木等に影響を及ぼすことがありますので注意してください。
1.作業は、保護メガネ、防護マスクを着けて行ってください。
2.風下から風上へ作業していきましょう。
風下の作業は、クロルピクリンガスにさらされやすくなります。
3.気温の高い季節では、早朝の涼しい時間帯に作業しましょう。
4.人家や畜舎、鶏舎が風下になる時は作業を一時中止しましょう。
クロルピクリンは風により流れていきます。風の向きには十分注意を払わないと思わぬ被害を生じます。また、クロルピクリンガスは空気の約5.6倍と重いので、とくに低地にたまりやすく、下に人家や畜舎、鶏舎がある場合は風のない時も注意が必要です。
5.缶に水を張るのはやめましょう
クロルピクリン缶に水を張っている例がみられますが、これは臭気防止にならないばかりか金属腐蝕を進め、缶の液漏れの原因となります。また、水の混入したクロルピクリンは効果が不足します。
6.正確に注入しましょう。
むらのないように正確に注入し、注入穴は直ちに被覆して下さい。注入と同時に被覆できる機械も広く使われています。
注入後はただちにポリエチレンなどのシート(0.03mm以上)で被覆します。シート被覆は作業者や近隣地域へのガスによる被害を少なくし、防除効果を高めます。
■標準的な消毒期間
平均地温 | 消毒期間 |
---|---|
25~30℃ | 約10日 |
15~25℃ | 10~15日 |
10~15℃ | 15~20日 |
7~10℃ | 20~30日 |
1.クロルピクリンガスが完全に抜けた後、移植(播種)直前に被覆を除去してください。
クロルピクリンは地温、土質、土性、土壌水分、畑の整備状態などによりガスの拡散速度が異なるので、これらの条件によりガスが抜ける時間に差がでますが、春・秋でおよそ2~3週間がめどです。ガスが抜けきっていないときは、ガスが抜けるまで待つか、あるいは作物の植付(播種)前に耕耘によりガス抜きを行ってください。
2.消毒した畑の再汚染には注意しましょう。
ガスが抜けた後は病原菌に汚染された土壌を畑に持ち込まないように心がけてください。農機具はよく洗浄し、苗は無病で健全なものを移植してください。
1.衣服の洗濯
注入作業で着た作業衣には薬液が付着している
こともあります。作業後は洗濯をしておきましょう。
2.機具の洗浄
機具の外部は水で洗浄できますが、注入機具の内部は灯油でよく洗っておきましょう。(注入機具の内部を水で洗うと腐蝕します。)
3.空き缶、空きビンの処理
缶やボトルの中のクロルピクリンはできる限り使い切ってください。
缶やボトルの側壁面にわずかに残った液は下記の手順で処理し、空き缶空きボトルは完全に臭気を抜いてください。
(1)空き缶の残液処理
❶周囲に影響を及ぼさない場所に、小さな窪みを作り、缶の口栓をはずし、窪みの中に収まるよう缶をひっくり返し倒立させます。
❷缶が倒れないよう、土寄せをしてください。この時、缶の中の残液が出やすくなるよう、傾かないように立ててください。(1~2日で缶の残液はなくなります)
(2)空き缶の残臭処理
❸そのまま、缶を倒立させておくと、中の臭気は徐々に抜けていきます。(ほぼ1ヶ月で臭気は抜けます)
❹1ヶ月後、缶を再度ひっくり返し上向きにし、臭いを確認します。臭いが残っていればそのまま1週間静置し、完全に臭いがなくなるのを待ちます。
(3)空きボトルも同様に残液・残臭処理をしてください。
(4)回 収
臭いが完全に抜けたことを確認して、圃場から回収しましょう。
(5)廃棄処分
回収した容器は臭気が抜けていることを確認できるよう口栓をはずして産業廃棄物として適切に廃棄処分してください。
4.貯蔵方法
クロルピクリンの貯蔵は直射日光をさけ、低温の場所で「医薬用外劇物」の表示をした専用の保管庫に鍵をかけて貯蔵します。
ハウス内での消毒はガスが滞留しやすいため、朝夕の気温の低い時間帯に、ハウスの開口部をすべて開放して作業を行い、直ちに被覆します。作業後はガスが外に漏れないようにすべてを閉鎖し、立入禁止の表示をします。
1.準備
土の水分状態を適正にします。
・ハウス内土壌は乾きやすいので、適正な水分状態となるように潅水します
作業開始前にすべての開口部を開けます。
・ガラス温室では入り口や天窓などの開放口をすべて開放します。
・ビニールハウスではビニールの裾を上げて、通風をよくします。
2.注入・被覆
・ハウスの開口部をすべて開放し、保護具を着用して注入作業を行います。
・注入処理と同時に被覆する機能を備えた土壌消毒機を使用すると便利です。
3.作業後
・ガスが外に漏れないようにハウスの開口部を全て閉鎖密閉し、立入禁止の表示をします。
・臭気が残っている期間はハウス内に入らないようにします。
・くん蒸後はハウスを開放し、十分換気した後に入室します。
4.安全作業のポイント
・薬液をできるかぎり大気中にさらさない。
・開栓は風上に立って行う。
・保護具を常備する。
・注入口への薬液導入を慎重に行う。
・薬剤は常に日陰や冷暗所に保管する。
1.クロルピクリンは目、鼻、のどなどを刺激するので注意してください。とくに目を刺激して涙を催しますが、刺激は一過性ですので、目がしみるからといって、けっして目をこすったりしないでください。液が眼に入った場合は、直ちに多量の水で洗い流し、速やかに医師の手当て、診断を受けてください。
2.皮膚についた場合にはただちにふきとって、多量の水、石鹸でよく洗ってください。
3.吸入した場合は、新鮮な空気のある場所に被災者を移動し、呼吸しやすい姿勢で休息させ、気分の悪い時は医師の手当て、診断を受けてください。